電子契約

賃貸借契約・定期借家契約の電子契約は可能?始め方や注意事項を解説

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2021年に可決された宅建業法の改正は、2022年5月18日から施行されています。賃貸取引の電子化も、同日より全面解禁となりました。電子契約によって変化するのは、重要事項説明書の電子交付はもちろん、オンライン上で賃貸借契約を結んだり、締結後の文書を電子交付したりできるようになることです。

従来でも不動産ポータルサイトなどを介して顧客と担当者はメールや電話でやり取りできましたが、契約に関する書類の交付などは郵送または来店で対応しなくてはなりませんでした。

不動産業界において電子契約の注目度は日に日に高まっており、今後さらに電子契約を導入する不動産会社は増えていくと予想されます。そこで今回は、不動産賃貸取引の電子契約の概要やメリット、導入に関する注意点を紹介します。

賃貸借・定期借家の電子契約が全面解禁されるまでの流れ

不動産取引での電子契約が全面解禁された2022年5月18日以降、賃貸借契約・定期借家契約ともに電子契約が可能になっています。

ここでは、不動産賃貸取引において電子契約が全面解禁されるまでの一連の流れについてご紹介します。

デジタル関連法案の可決、公布

デジタル関連法案(正式名称は「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」)が、2021年5月12日に可決され、2021年5月19日に公布されました。不動産会社にとって重要なポイントは、デジタル関連法案の可決により、宅建業法、借地借家法の改正が決まったことです。

宅建業法では、「売買の媒介契約の書面交付」(34条)、「重要事項説明書の書面交付、宅建士の記名・押印」(35条)、「賃貸借契約・売買契約の内容を記した書類の書面交付、宅建士の記名・押印」(37条)が定められています。

借地借家法では、定期借地契約と定期借家契約が電子化できないことが定められています。

しかし、デジタル関連法案が可決され、宅建業法と借地借家法の改正が決まったことで不動産取引の全面的な電子化が可能になることが決まりました。

デジタル関連法案の施行

2021年9月1日に、デジタル関連法案が施行されました。

ただし、デジタル関連法案の施行には「施行までに一定の準備期間が必要なものを除く」という条件があり、宅建業法はこの条件の対象のため2021年9月1日時点では宅建業法の改正は施行されませんでした。また、借地借家法もこの時点で施行されませんでした。

※参照:第204回 通常国会|内閣官房ホームページ

改正宅建業法の施行

宅建業法は「施行までに一定の準備期間が必要なものを除く」という条件に当てはまるため、デジタル関連法案と同日には施行されませんでしたが、2022年5月18日から施行されています。

改正宅建業法の施行により書面公布や宅建士の押印の規定がなくなり、ついに不動産取引での電子契約が全面解禁されます。

このほか、電子契約に関わる法律については以下記事をご参考ください。【2022年最新版】不動産電子契約に関する法律まとめ

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賃貸物件の電子契約解禁で得られるメリット

賃貸物件における電子契約の解禁は、不動産業者にとっても入居者にとっても多くのメリットが期待できます。

ここでは不動産業者と入居者それぞれの視点における電子契約のメリットを紹介します。

業者側が得られるメリット

不動産業者は物件情報や重要事項説明書、各入居者との契約書など、多くの書類を作成・管理しなくてはなりません。不動産電子契約サービスが導入された場合、営業活動をはじめさまざまなシーンでメリットが得られます。

書類を郵送する手間・費用を軽減できる

書類の郵送にかかる手間や費用を軽減できます。従来の書類を用いた契約方法では、契約書作成のために、複数回書類を郵送する必要がありました。

また、契約相手が遠方の場合は手間や費用がかかることに加えて、配達に多くの日数も要します。近隣の場合でも店舗まで直接来てもらう場合は手間が生じます。

しかし、電子契約なら書類を作成、プリントアウト、封筒に宛先を記入、必要なものを封入してポストへ投函するといった従来の一連作業がすべて不要です。相手からの返送を待つ必要もなく、やり取りにかかる手間はもちろん、費用も軽減できます。

費用に関しては、人件費も削減できるため業者側に大きなメリットがあります。手間が軽減できる点においては、ユーザー側にとってもメリットです。

書類または電子など複数の選択肢を提示できる

電子契約の導入を機に、完全にオンラインでのやり取りに切り替える必要はありません。これまで対応していなかったサービスを新たに導入して、あくまで顧客に複数の選択肢を提示するだけです。

通信環境が整っていない方やオンラインサービスに苦手意識をもっている方との契約では、従来同様、書面を利用しつつ、希望者には電子契約で対応することができます。

契約方法の選択肢が増えれば、対応力の高い業者として評価されますし、これまで取りこぼしていた遠方のユーザー層にリーチできるようになり、契約数増加につながります。

契約だけでなく更新手続きも電子化できる

賃貸借契約書をはじめとする契約関連の書類はもちろん、契約更新時の合意書も電子化できます。契約更新期間を迎えた入居者はオーナーとの合意のもと、更新手続きを行います。

契約更新時の合意書とは、賃貸借契約の更新について合意している旨を記した書類です。更新する条件に特約事項が生じる場合は、合意書に詳細を記載します。連帯保証人の状況なども記載することで、入居者とオーナー間のトラブルを防ぐ役割も担っています。

契約更新の手続きは新規契約の場合と比べ、確認事項も少ない場合がほとんどです。書面でやりとりを交わすよりも、オンライン上で済ませたいと感じるオーナーも多いでしょう。そのため需要が多く、電子契約の導入メリットは大きいです。契約更新時に必要な合意書の作成も電子化できれば、入居時と同じく書類郵送や来店の手間がかかりません。

重要書類を保管しやすくなる

不動産業界における電子契約は不動産会社やオーナー、ユーザー(入居者)のやり取りの手間を省くだけではなく、書類の保管に関しても利便性が期待できます。

従来のように紙の書類を保管する場合、複数の手間が生じます。

・書類のファイリング
・保管場所の確保
・定期的な保管場所の確認、整理

電子契約を利用すると、書類はすべてPDFの状態で保存可能です。PCやスマートフォンなどに膨大な量の書類を保存できるメリットがあります。フォルダで整理しておけば確認しやすく、後日契約内容を参照したい場合も、短時間で目的の書類が見つかります。

書類のやり取りに加えて保管や整理、参照も手軽になることは、業者側はもちろんユーザー側にとってもメリットです。

ユーザー側が得られるメリット

不動産賃貸契約の電子契約は、不動産業者に加えてユーザー側にも多くのメリットが期待できる手法です。代表的なメリットとして3つを紹介します。

契約日を調整しやすくなる

賃貸契約を希望するユーザーの状況は、さまざまです。とにかく、すぐに契約して入居したいと希望する方もいれば、数ヶ月後を目途に引っ越したいと考えている方もいます。

中には早期の契約を希望しつつ、仕事や家庭の事情で店舗に出向く時間がとれないケースもあります。

電子契約を導入すれば「店舗に出向く時間的余裕がない」と早期の契約を諦めている層が、契約日を調整しやすくなります。

店舗に出向く必要がない電子契約は、仕事中の昼休憩中やアポイントの時間調整中など、ユーザーが隙間時間を有効活用できます。契約日の日程調整がしやすくなり、業者側も忙しいからと契約に進めなかった層の獲得につながります。

物件が早期に決まり、引っ越しの予定も立てやすくなる点も、忙しいユーザーにとって大きなメリットです。

部屋探しにかかる費用を節約できる

賃貸借契約書を取り交わすまでにコストが生じるのは、ユーザー側も同じです。電子契約の導入は、ユーザーにとっても部屋探しにかかる費用の節約につながります。

部屋探しがスムーズに済めば物件決定までの来店回数は減らせますが、契約のための再来店は避けられません。来店数が多くなればなるほど、交通費がかさみます。

電子契約を活用すれば、お部屋選びの来店以降、店舗に足を運ぶことは不要です。交通費を節約できるうえ、移動時間を考慮した日程調整をする必要もありません。

複数の契約書を手書きする手間が減る

契約時の面倒な作業のひとつが、複数の書類にサイン・押印することです。賃貸借契約は、貸主向け・借主向けなど、同じ内容の契約書を複数枚作成する必要があります。従来の方法ではすべての書類に手書きで住所や氏名を書いたり、不動産業者の指示に従って所定の位置へ押印したりしなければなりませんでした。

電子契約ならサインや押印もオンライン上のデジタルツールで対応できるため、同じ内容を何度も手書きせずに済みます。契約書の作成時間の削減も期待できます。

以上のようなメリットから、実際にZ世代の8割以上が部屋を借りる際、電子契約を希望しているという調査結果が出ています。(弊社調べ)Z世代の8割以上が部屋を借りる際、電子契約を希望!不動産会社の導入状況とのギャップも(いえらぶ調べ)

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賃貸物件における電子契約の始め方

賃貸物件で電子契約を利用するときの一般的なフローを紹介します。各ステップで必要な準備や注意点にも触れます。

業務フローの整備

電子契約に変えることで業務フローが変わるため、電子契約では契約締結までに「いつ」「誰が」「何をするか」など、細かいフローを整備しておく準備が必要です。電子契約によって不要になる業務と新しく必要になる業務を整理しておきましょう。

対面ではなく非対面でのやり取りで契約締結まで完了できるようになるので、ネット環境やIT重説に利用するWeb会議ツールの用意が必要ないかも確認しておくとよいでしょう。

システムの選定

電子契約を行うために新しくシステムを導入する不動産会社も多いです。電子契約サービスはさまざまな会社から提供されているため、どのシステムを導入するのかを決める必要があります。

会社の方針や業務形態によって重要視するポイントは異なると思われますが、選定の基準には「価格」「信頼感」「他社連携」「カスタマイズ性」などが挙げられます。新しいシステムを導入して運用できるようになるまでには時間がかかる場合もあるため、システムの導入が見込まれる場合には早めに検討を始めることをおすすめします。

電子契約システム「いえらぶサイン」なら、物確から契約まで一貫してサポートできます。「クラウドサイン」や「GMOサイン」と連携し、法的セキュリティ面にもこだわっているため、安心してご利用いただけるのが強みです。

電子契約システムの選び方については、詳しくは以下の記事をご参考ください。

オーナーへの案内

賃貸の契約で電子契約に切り替える場合は、オーナーへの事前の説明も重要な準備になります。

契約締結までのフローが変更になる説明だけでなく、オーナーの押印が必要な書類でオーナーにも電子署名で対応してもらいたい場合には、事前に電子署名サービスの使いかたの説明もしておくと安心です。

社内規定の確認

契約のルールや書類の保管のルールなど、契約に関連する社内規定の確認をしておきましょう。場合によっては、電子契約の場合の新しい社内規定が必要になるかもしれません。

業務フローの整備やシステムの導入の準備と一緒に、社内規定の見直しの必要があるかも確認しておきたいポイントです。

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賃貸物件の電子契約における注意事項

賃貸借契約において電子契約を利用する場合は、いくつかの注意点があります。オンラインで交わした契約が、紙の書類と同じく法的効力をもてるように、契約締結時は次の4つを意識しなくてはなりません。

①電子署名法に沿った契約を行うこと

電子署名法とは、「法的効力のある電子契約はどんなものなのか」を定めた法律です。法的効力のある電子契約の条件を満たしていない場合、もし裁判になった場合に契約として認められません。

重要なポイントは、「本人が電子署名を押したことと、改変されていないことがわかること」(第2条)と「本人しかできない電子署名がされていること」(第3条)です。

※参照:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索

②電子帳簿保存法に沿って契約書のデータを保管すること

電子帳簿保存法とは、「帳票を電子データで保管する際に守らなければいけないこと」を定めた法律です。対象は、国税関係(所得税、法人税など)の帳簿・書類とされていて、不動産の取引においては決算書や契約書が該当します。

契約書などの書類は7年間保存することが法律で義務付けられていますが、書面である必要は無く、電子帳簿保存法に沿っていれば電子ファイルでの保存で問題ありません。

書類を電子ファイルだけで保管する場合には、電子帳簿保存法に沿っているか注意してください。

※参照:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 | e-Gov法令検索

不動産取引において、契約は法律が関わる重要な業務です。システム導入の際は、セキュリティや使い勝手だけでなく、法律に沿っているかどうかも重要な選定ポイントになります。

③高いセキュリティ下で契約書を保管すること

オンライン上での契約で懸念されるのが、セキュリティ問題です。不十分なセキュリティ対策では、悪意ある第三者に書類を改ざんされたり、情報漏洩が起こったりするリスクがあります。

そのため、電子契約を利用するときは、書類の改ざん、漏洩リスクを可能な限り排除するために、高い暗号技術を用いたセキュリティで書類を保管することが求められます。自社で利用しているセキュリティシステムの安全性や、関わる社員の意識の高さも考慮しましょう。

セキュリティ関連でトラブルが生じれば、金銭的な損害だけではなく、オーナーからの信用問題にも関わるため注意が必要です

④丁寧な意思疎通を意識すること

インターネットが普及する一方で、セキュリティリスクなどの問題から「電子契約は不安」と感じる方もいます。インターネット自体に慣れていない方や入居前で通信環境が整っていない方も多く、必ずしも電子契約が顧客満足度向上につながるとは限りません。

電子契約は、あくまでオーナーや入居者との同意のもと利用できるサービスです。オンラインでの契約締結を避けたい顧客には、従来どおり書面で賃貸借契約を結ぶ必要があります。

電子契約と書面での契約、どちらで進めるのか、オーナーや入居者、不動産業者の担当者が同じ認識をもっているかどうか配慮することがトラブル防止につながります。

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実際に電子契約を導入している不動産会社の事例

不動産取引の電子化の全面解禁に向けて、ほかの不動産会社がどのような準備をしているのかは気になりますよね。

今回は、いえらぶGROUPが提供する電子契約システム「いえらぶサイン」をご利用いただいていて、すでに一部の契約で契約業務のオンライン化を実現している2つの不動産会社様の事例をご紹介します。ぜひご覧ください。

オールハウス株式会社様

2021年9月より「いえらぶサイン」を導入していただいたオールハウス株式会社様の導入事例です。今回はプロパティマネジメント事業部次長の馬場様にお話を伺いました。

とても早い時期から「いえらぶで電子契約ができないか」というご要望をいただくなど積極的に導入を進めた立役者である馬場様に、導入時に押さえるべきポイントや導入効果について伺いました。オールハウス株式会社様|いえらぶCLOUDの評判・口コミ【導入事例】

株式会社さくら屋様

2021年7月より「いえらぶサイン」を導入していただいた株式会社さくら屋様の導入事例です。今回は代表取締役を務める島田様にお話を伺いました。

日頃からいえらぶCLOUDの画面設計に関する改善点を積極的に提案してくださる島田様。電子契約を実際に導入してみてわかった利点と課題点を明かしていただきました。株式会社さくら屋様|いえらぶCLOUDの評判・口コミ【導入事例】

株式会社日本財託管理サービス様

2022年9月より「いえらぶサイン」を導入していただいた株式会社日本財託管理サービス様の導入事例です。今回は賃貸営業部の菅原様と債権管理部の遠藤様にお話を伺いました。

新規契約では書類を20分の1まで削減、契約にかかる期間は半分以下になるなど、導入後の効果をお話しいただきました。日本財託管理サービス様|いえらぶCLOUDの評判・口コミ【導入事例】

電子契約、契約関係者にどう協力してもらう?
不動産会社向けに徹底解説!電子契約運用事例

まとめ

いかがだったでしょうか。

電子契約に切り替えると多くのメリットがありますが、変わることも多いです。新しい業務フローや新しいシステムの運用がスムーズに進められるように、すでに電子化できる契約から少しずつ切り替えて進めていくことが重要です。

いえらぶGROUPも電子契約システム「いえらぶサイン」を通じて多くの不動産会社様の電子契約の導入をサポートしていきたいと考えています。

いえらぶサインは、不動産業務に特化した電子契約システムです。従来の紙とハンコが必要な契約業務を「オンラインで完結」することができるため、リーチできる顧客の幅も広がります。

不動産業務に沿った設計やセキュリティ性能、募集から更新までのデータ連携の実現など、便利で使いやすいサービス作りにこだわっていますので、電子契約への切り替えの際にはぜひ「いえらぶサイン」の導入をご検討ください!

【無料お役立ち資料】
電子契約に関する法律マニュアル

不動産会社の電子契約いえらぶサイン

株式会社いえらぶGROUP

この記事を書いた人いえらぶ編集部

全国15,000社の不動産会社の業務効率化や売上アップをサポートする中で得たノウハウを日々発信中。SNS集客やBPOサービスなど、最新の情報もどんどん発信していきます。

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