【全賃連載】システム活用で法令順守
不動産DXで実現する「顧客ファースト」第10回
当社常務庭山が全国賃貸住宅新聞に寄稿している連載記事です。
提供元: 全国賃貸住宅新聞社
書面の不備に指導
今年5月、国交省は賃貸住宅管理業者およびサブリース事業者に対して実施した、パトロールの結果を公表した。パトロールは、昨年6月から今年3月にかけて全国179社で実施され、そのうち約6割にあたる106社が是正指導を受けた。今回は、昨年1月にはじめて実施されたパトロールよりも長期間かつ大規模に実施され、賃貸住宅管理業法の浸透に向けて国交省が本格的に取り組んでいることがうかがえる。
是正指導の多くは管理受託契約に関するもので、「締結時の書面の交付義務違反」が57件(31.8%)、「締結前の書面(重要事項説明書)の交付義務違反」が26件(14.5%)だった。
書面の交付自体は行われているものの、内容が不十分なケースが多い。重要事項説明書・契約書にそれぞれ省令項目がきちんと記載されているか、改めて点検していただきたい。特に「オーナーへの定期報告」や「入居者に対する周知事項」に関する不備が多いようだ。これらの項目に不備があると、オーナーや入居者の信頼を損ない、トラブルに発展する可能性があるため、十分な注意が必要だ。
運用ルールも適宜変更されている。たとえば契約変更時には、電話での重要事項説明が可能になった。 以前は、新規契約・変更ともに対面またはIT重説が必須だったが、 IT重説ができない高齢のオーナーが多いことや、コロナ禍でオーナーが管理会社の訪問を嫌がることなどを背景に、昨年3月末にルールが変更された。
ただし、電話やIT重説など対面以外で実施する際は、事前にオーナーの承諾を得る必要がある点に注意していただきたい。パトロールの際には、事前承諾を得たことが確認可能な書面の提出が求められる。
さらに、書類作成業務をシステムで省力化・自動化し、抜け漏れを防ぐことも重要だ。法改正によって必要な項目が変わる可能性もあるだろう。そういった際にも、クラウドシステムであれば随時アップデートされるものも多いため、自社で個別に対応するよりも簡単に法対応ができる。
その他、多かった指摘事項としては「帳簿の備付け等義務違反」が37件(20.7%)あった。
事業年度ごとに帳簿を整理していなかったり、作成していない年度があったりすると、こちらの義務違反に該当する。帳簿は年度ごとにファイリングしておくか、いつでも印刷可能な状態であれば電子データで保存する形でも問題ない。クラウドシステムで保管しておけば、紛失のリスクが減り、検索や絞り込みも容易になるためおすすめだ。
IT重説の代替手段として電話対応が可能になったように、IT化は相手の状況を考慮して進めるべきであり、無理やり推進するべきものではない。相手方の状況を踏まえた対応ができる体制にしておく必要がある。ただし相手のニーズに柔軟に応えようとすると、利用ツールが増え、業務は煩雑になる一方だ。メール・SMS・LINEなどのコミュニケーションツールは、システムで一元管理するといった、抜け漏れを防ぐ仕組みが求められる。
いえらぶGROUP 共同創業者・常務取締役 庭山健一
マンションデベロッパーでの経験を生かして、2008年にいえらぶGROUPを設立。不動産業務支援システム事業、受託開発事業など営業人を統率。14年に常務取締役に就任。
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