不動産業界の2023年の振り返りと、2024年に予定される法改正・制度変更について
目次
- ・ 不動産業界の2023年の主なニュース
- ┗ 1月 管理業法の厳格化と立ち入り検査
- ┗ 4月 民法の改正:所有者不明または管理不全の土地・建物の管理命令
- ┗ 4月 不動産登記法改正(相続土地国庫帰属制度が開始)
- ┗ 6月 改正消費者契約法(勧誘・契約解除における消費者の保護)
- ┗ 7月 賃貸住宅メンテナンス主任者の創設を発表
- ┗ 8月 中国恒大集団がアメリカで破産申請
- ┗ 10月 インボイス制度の開始
- ┗ 10月 ステルスマーケティング規制の導入
- ┗ 12月 改正空家特措法の施行
- ・ 2024年に予定される、不動産関連の法改正・制度変更
- ┗ 1月 電帳法の宥恕(ゆうじょ)期間が終了
- ┗ 1月 住宅ローン減税、省エネ基準への対応必須に
- ┗ 1月 マンション節税の改正
- ┗ 4月 建築基準法改定(木造の防耐火設計の選択肢が拡大)
- ┗ 4月 省エネラベル努力義務化
- ┗ 4月 労働基準法改正で建築業界も残業上限規制が開始
- ┗ 4月 相続土地の申請義務化
- ┗ 10月 社会保険の適用拡大(アルバイトやパートへ)
- ・ まとめ
2023年は、マンション管理業者への一斉立入検査やインボイス制度の開始など、法令対応が求められる出来事がたくさんありました。
今回は、不動産業界における2023年の主なニュースを振り返るとともに、2024年に予定される法改正や制度変更についてまとめました。
2024年も様々な対応が必要になります。2024年の計画を立てる際にご活用いただけると幸いです。
不動産業界の2023年の主なニュース
まず、2023年の主なニュースから振り返りましょう。
1月 管理業法の厳格化と立ち入り検査
1月~2月にかけて、賃貸住宅管理会社やサブリース会社に対する「全国一斉立入検査」が実施されました。3月には「賃貸住宅管理業法」に基づく初めての監督処分が下され、5月には60%の事業者が立入検査で是正指導を受けたと発表されました。
必要な対応を把握しきれていない事業者が多い現状が、浮き彫りになった出来事でした。
参考:全国賃貸住宅新聞「賃貸住宅管理業法で初の監督処分 サブリース事業者が業務停止へ」
参考:国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導」
4月 民法の改正:所有者不明または管理不全の土地・建物の管理命令
2023年4月の民法改正では、所有者不明または管理不全の土地や建物に関する新たな規定が導入されました。この改正により、裁判所に選任された管理人によるこれらの不動産の管理・処分が可能になります。
これにより、管理が適切に行われず社会的に問題となっている、土地や建物の活用促進が期待できます。
参考:法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」
4月 不動産登記法改正(相続土地国庫帰属制度が開始)
同じく4月に、不動産登記法改正により相続土地国庫帰属制度が開始されました。これにより、相続が発生した場合に所有者が不明である土地について、一定期間が経過すると国庫に帰属するようになりました。
所有者不明の土地が長期間放置されることを防ぎ、土地の有効活用や市場流通を促進することが期待されています。
6月 改正消費者契約法(勧誘・契約解除における消費者の保護)
コロナ禍でオンライン取引が増えたことや、超高齢化社会の進展に対応が必要という背景があり、6月に消費者契約法が改正されました。
主な改正内容は以下の4つです。
① 契約の取消事由の追加
② 解約料の説明についての努力義務
③ 免責範囲が不明確な条項を無効とする
④ 事業者の努力義務の拡充
参考:消費者庁「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律(令和4年法律第99号)等について」
7月 賃貸住宅メンテナンス主任者の創設を発表
11月に「賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度(賃貸住宅メンテナンス主任者)」を開始する事が、日管協より発表されました。
賃貸住宅管理業法では、「賃貸住宅の維持保全(1)」と「(1)を受託したうえで金銭の管理を行うこと(2)」の2点を賃貸管理業として定義しています。そのうち(1)を強化するために、賃貸住宅メンテナンスが新設されました。
12月には、3,000人以上が申し込み、673人が資格所有者となったことが報じられました。
参考:全国賃貸住宅新聞「日管協、建物管理の資格創設」
参考:全国賃貸住宅新聞「(公益)日本賃貸住宅管理協会、メンテナンス主任者、反響3100人」
8月 中国恒大集団がアメリカで破産申請
巨額の債務を抱えて債務不履行に陥っていた、中国の不動産大手「恒大集団」が、ニューヨークの裁判所に米連邦破産法第15条の適用を申請したことが報道されました。これに続き、最大手の「碧桂園」も資金繰りが厳しくなっていることが表面化しました。
中国経済の低迷を示す、衝撃的なニュースでした。
参考:日本経済新聞「波立つ中国リスク、不動産発ドミノ危機 試される地力」
10月 インボイス制度の開始
10月1日より開始されたインボイス制度は、不動産会社にも大きな影響を及ぼしています。弊社が実施した調査によると、インボイス制度の開始により、課税事業者である不動産会社の2/3以上が業務量の増加を感じています。
参考:「インボイス制度開始で不動産会社の2/3以上が業務増加|不動産業界の対応状況調査(いえらぶGROUP)」
インボイス制度が不動産業務にもたらす影響を解説!
~税理士監修~インボイス制度対応マニュアル
10月 ステルスマーケティング規制の導入
同じく10月1日に、ステルスマーケティングが景品表示法違反により規制されました。
最近は、SNSで集客を行っている不動産会社が増えているので、投稿内容には細心の注意が必要です。例えば、企業がインフルエンサーに広告だと分からない宣伝を依頼し、SNSに投稿されたとします。この場合の処罰対象はインフルエンサーではなく、依頼した企業です。
詳しい内容は消費者庁のサイトで確認できます。
参考:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」
12月 改正空家特措法の施行
12月13日からは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部改正が施行されました。これにより、空家活用の活性化が期待できます。
今回の改正ポイントは以下の4つです。
① 空家活用促進区域制度の導入
② 官民連携による空家管理支援体制の強化
③管理不全空家の新設と早期介入による問題防止
④ 特定空家対策の効率化と緊急時対応の強化
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
2024年に予定される、不動産関連の法改正・制度変更
ここでは、2024年に予定されている法改正や制度変更についてご紹介します。
1月 電帳法の宥恕(ゆうじょ)期間が終了
2022年1月に電子帳簿保存法(電帳法)が改正され、電子取引データを紙で保存することが原則できなくなりました。2023年12月末までは宥恕期間が設けられていましたが、2024年1月からは、電帳法への対応が求められます。
具体的な保管方法や対象書類に関しては、下記の記事をご覧ください。https://ielove-cloud.jp/blog/entry-04367/
1月 住宅ローン減税、省エネ基準への対応必須に
2024年1月から、住宅ローン減税の制度内容が変更されます。この変更により、新築住宅を購入する際には、省エネ基準に適合しているかどうかを確認する必要があります。
また、この条件に適合していない新築住宅を購入した場合、住宅ローン減税の対象外となるため注意が必要です。
1月 マンション節税の改正
国税庁は2023年6月に、マンションの相続税評価の見直しを発表しました。現在は実勢価格の平均4割程度にとどまっている評価額が6割以上に引き上がる見込みです。
また区分マンションの新たな相続税評価基準は、2024年1月1日から適用される予定です。
参考:日本経済新聞「マンション節税防止 算定法見直し、評価額4割から6割に」
4月 建築基準法改定(木造の防耐火設計の選択肢が拡大)
2024年4月の建築基準法改正では、木造建築の防耐火設計の選択肢が拡大されます。この改正により、木造建築における耐火構造の代わりに準耐火構造で設計できる範囲が拡大されることになります。
火熱遮断壁等で区画することによって防火規制の適用を一部除外できるようになり、木造建築の利用促進が期待されます。
4月 省エネラベル努力義務化
2024年4月から始まる、建築物省エネ法に基づく「建築物の省エネ性能表示制度」により、省エネ性能ラベルの表示が努力義務となります。
建築物の省エネ性能を広告等に表示することで、消費者が建築物を購入または賃借する際に省エネ性能を把握しやすくすることを目的としています。また、SUUMOやHOMESといった大手ポータルサイトも4月より省エネ性能表示を開始すると発表しています。
参考:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度」
4月 労働基準法改正で建築業界も残業上限規制が開始
これまで、建設業における長時間労働の常態化と、それに伴う深刻な人材不足が問題視されてきました。この改正により、2024年4月から建設業界においても残業時間の上限規制が施行されます。
これまでは残業時間に上限が設けられていませんでした。改正後は、月45時間、年360時間が時間外労働の上限になります。
4月 相続土地の申請義務化
近年、所有者不明の土地が増えていることが問題視されています。これに伴い、不動産登記制度の見直しが行われます。相続によって土地を受け継いだ場合、特定の期限内にその土地の登記を行うことが義務化されます。
参考:法務局「知っていますか?相続登記の申請義務化について」
10月 社会保険の適用拡大(アルバイトやパートへ)
2024年10月より、社会保険の適用が拡大されます。
少子高齢化により、労働人口の減少が問題となっている一方で、高齢者や女性などが様々な雇用形態で働く機会が増加しました。今回の法改正は、これらの変化に対応するためのものです。
改正のポイントは以下の2つです。
①対象となる企業が「従業員規模が100人超の企業」から「50人超の企業」に
②対象となる労働者を「パートタイム」や「アルバイト」まで拡大
参考:政府広報オンライン「社会保険の適用が段階的に拡大! 従業員数101人以上の企業は要チェック」
まとめ
2023年の不動産業界では、全国一斉立入検査やインボイス制度の開始など、様々な法改正や制度変更がありました。また、中国恒大集団の破産申請など、海外の動向も不動産市場に大きな影響を与えました。
2024年には、省エネラベル表示義務化や建築基準法改定など、不動産業界に影響を与える法改正や制度変更が予定されています。
これらの法改正や制度変更に迅速に対応するためにも、今のうちから情報収集していきましょう。今後ともいえらぶGROUPでは不動産業界の活性化のため、情報を提供していきます。