事故物件を隠して契約するとどうなる?実際にあった訴訟事例も紹介!
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管理会社の業務のひとつに、空室募集があります。
告知事項のある物件、事故物件なんて言ったりするときもありますが、そういった物件は、入居者誘致が難しいですよね。
なかなか入居者が決まらないと困るので、募集時には告知事項ありの物件であることを隠して募集したい!と考える人もいるかもしれません。
実際に隠して募集したら、どうなるのかを今回ご紹介します!
告知事項あり物件って?
賃貸管理をしている方ならご存知とは思いますが、まずは告知事項あり物件とはどういうものなのかについておさらいしていきます。
告知事項ありとは、読んで字のごとく、契約する前に入居者に知らせることがあるということです。
その内容は主に、部屋で自殺や殺人が起きたことがあるというものです。
主に「事故物件」や「訳あり物件」と一般的には呼ばれています。「心理的瑕疵」と表記されることもあります。
事故物件と聞くと、過去に自殺・殺人、事件・事故・火災があった物件というイメージもありますが、周辺に嫌悪施設がある場合や指定暴力団などの事務所があるという場合も告知されます。
ここでの嫌悪施設は小中学校、葬儀場、清掃工場など環境悪化や騒音・悪臭被害など近隣住民に影響を及ぼす施設を指します。
このほかにも、告知事項ありの物件に該当するものもありますが「その建物や事項を、契約前から知っていたら購入・契約していなかった。」ということを買主、借主に言われると「心理的瑕疵」に該当するという基準が設けられています。
「自分の前の入居者が、この部屋で殺されたor自殺したなんて…」
と、多くの人が思ってしまうので、成約につなげるのが難しくなります。
本来の家賃相場よりも2割から3割ほど家賃を安くして募集している管理会社がほとんどかと思います。東京では1割ほどと、大幅に値下げをしない傾向が多いと感じます。
実際にSUUMOが行った調査(出典:SUUMOジャーナル 事故物件だけど条件がよい物件があったら、あなたなら借りる?借りない?事故物件調査[2])によると、
・孤独死などの自然死や病死であれば、住むことを検討すると答えた人が約半数
・自殺や他殺の場合、住むことを検討すると答えた人は3割を切る
・該当の部屋ではなく同じ建物内で起こった場合、住むことを検討すると答えた人は4割に上る
という結果になりました。
この数字が多いか少ないかは別として、ある一定数にはそれなりの需要があるようです。
しかし、大多数は事故物件を避ける傾向にあると思います。客付けに苦労するのが実情のようです。
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告知事項を故意に隠して募集し、契約したらどうなる?
事故物件の中には、部屋の状態にほとんど問題がなく、人が死んだという事実さえ隠したら、家賃を下げずとも入居者を誘致できるレベルのものもあるかもしれません。
家賃を下げなければいけないのは、管理会社にとっては本望ではないはずです。
しかし、結論を言うと、告知事項を隠す行為は宅建業法違反になり、違法行為になります。
入居者が部屋を借りるか借りないかの判断をするときに大きな影響を及ぼすと考えられる事実に関しては、必ず重要事項説明として入居者に説明しなければならないと宅建業法上で定められています。
さらに「瑕疵担保責任」という宅建業法のルールに則り、業者にペナルティを与えることが認められています。
ここでの「瑕疵」とは「欠陥」を意味し、貸主には物件の欠陥(瑕疵)を担保する責任があります。
先程も述べたように、借主が「その事実を知っていれば契約しなかった。」と判断した場合、貸主に損害賠償を請求することも可能です。
このようなリスクに陥らないために告知義務が定められているのです。
しかし、告知義務の期間についてはしっかりと決められているわけではありません。
さらに、事故物件に別の人が一度入居した事実があれば、告知しないという仲介会社も存在します。
また、売却を繰り返した物件では、オーナーや管理会社・仲介会社がどんどん変わっていくため、その物件の情報を引き継がなければ、事故があった事実はどこかで途切れてしまってもおかしくないでしょう。
こうなってしまうと、後から事故物件の存在を知ることとなり、訴訟の対象にもなりかねません。オーナーが申告しないことは告知義務違反となるので、しっかり双方で情報の共有を行ってください。
厳密なルールが決められていないため、いろいろな状況を踏まえて告知する期間を模索するのがいいでしょう。
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実際にあった事故物件訴訟の事例
以下に続くのは平成26年、大阪高裁での判決事例です。
概要
尼崎市にある8階建て・129戸のマンションの1戸を平成23年5月に競売でAさんは取得しました。
その直後、マンション元所有者の妻が部屋内で自殺しているのが発見されました。
24年8月の前まで部屋に入居した者はおらず、平成24年7月に募集・契約を仲介業者にAさんは委託し、8月末にBさんと賃貸借契約を締結しました。
当時妊娠6か月の妻と共に居住するのがBさんの引越しの目的でした。
妻と共に8月末にBさんが引越してきた日、同マンション居住の知人から契約締結した部屋で居住者が自殺した事実を知らされました。
契約締結時には、Bさんは自殺に関することをAさんや不動産会社の人からは何も聞かされていませんでした。
Bさん夫妻は、驚愕して妻は実家に、Bさんは以前住んでいたマンションに戻りました。
Bさんは、賃貸借契約締結の為に支払った金額や慰謝料の損害賠償をAさんに請求し、告知事項を告げる義務を怠ったとしてAさんを訴えました。
判決
Aさんは、競売後の手続きは人に任せていて、自分は知らなかったと主張しましたが、それはあまりに不自然な経緯だとして裁判官に主張を退けられました。
自殺の後、Aさんがリフォームの指示を出していたこともあり、自殺の事実を知らなかったことはあり得ないとして、Bさんの損害賠償請求を認めました。
この判例からも分かるように、告知事項を隠して入居者と賃貸借契約を結ぶことは、違法行為であり、損害賠償を払うことになることもあります。
まとめ
管理している物件、所有している物件で人が死亡する事件が発生してしまうと不動産価値は大きく下がり、賃貸経営にも大きな被害が出ます。
資産的に余裕がない等、告知事項を隠してでも空室募集しなくてはいけないという状況にあり、隠して募集してしまおうかなと思ってしまう方の気持ちも理解はできます。
ですが、実際に行動に起こしてしまうとそれは前述したように違法行為になってしまいます。
マンションであれば、ほかの入居者が知っていますし、今やネットで調べればほとんどのことが分かってしまいます。隠していても告知事項ありの物件であることはバレてしまうと思います。
隠して契約して、損害賠償を請求されてしまっては、かえって損をしてしまうでしょう。
また、最近では事故物件の存在が知られてきたことによって、昔ほど嫌われるものでもなくなってきています。
事故物件であることを告知して家賃を下げて契約を結ぶことは、宅建業法上でも定められていますので、しっかり守り、適切な条件で空室対策を行っていきましょう。
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