【管理会社向け】賃貸の原状回復の特約が無効になる場合とは?
目次
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特約はどんな時に認められる?
賃貸借契約を結ぶ際、文字通り普通の契約とは違った“特別な約束事”として結ぶのが特約です。
特に原状回復について、特約を結ぶことは多いです。日本の法律には「対等な当事者間での約束は自由である」との原則がありますが…
原状回復に関する特約はどこまで認められるのでしょう?
実は過去に最高裁が出した判決の中で、特約が認められるための3つの要件を提示したことがあります。
今回は特に原状回復の特約が認められる条件や実際の特約についておさらいしましょう。
借主を守る3要件
さて、前提条件として貸主と借主では、情報量や交渉力の差を考慮して、借主の方が弱い立場に置かれており、借主は保護される立場にあります。
過去に最高裁が示した3要件は以下の通りです。
・特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在する
・賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識している
・賃借人が特約による義務負担の意思表示をしている
以上の3つの要件を満たしていない場合、「消費者契約法」という法律によって契約は無効、つまり最初からそんな特約がなかったという扱いになります。
特約が有効かどうか判断する基準は?
では特約が3つの要件を満たしているか、判断する上での基準は何でしょうか?
最高裁の判決以降、特約に関する様々な判決が下されてきましたが、そこから分かるのは下記4つの判断基準となります。
①借主負担の範囲は明確か?
借主が何に対して負担するのか、具体的に明示する必要があります。
②借主負担は予測可能か?
借主がいくら負担するのか、目安の金額がわかる必要があります。
③借主が義務以上の負担であると認識しているか?
本来貸主負担である内容を借主が負担する場合、その事実を借主側に伝える必要があります。
④借主負担が妥当なものかどうか?
借主負担の額が異常に高額では認められず、相場に適った金額である必要があります。
特約を定める際には、これら4つの判断基準に適したものとなるように注意しましょう。
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具体的にはどんな特約が認められるの?
ここまで原状回復に対する特約が認められるための要件と判断基準を確認しました。では、これから特約の条文を見て、要件を満たしているのかチェックしてみましょう。
経年劣化に関する修理費用については、借主がこれを負担する
こちらはどうでしょうか。
まず気付くのが、借主負担する原状回復の内容が具体的ではないことです。借主負担の範囲は明確でなければいけないのでした。
「ハウスクリーニングにかかる費用については」「襖の張替え費用については」といったように、具体性がなければなりません。
襖の張替え費用については、借主がこれを負担する
では、この場合はどうでしょうか。
具体的な内容が明示されていますがまだ不十分でしょう。これでは借主が負担する費用について見当がつきません。
「なお、襖の張替え1枚につき2000円とする。」などの但し書きを加えるとよいでしょう。
襖の張替え費用については、借主がこれを負担する。なお、襖の張替え1枚につき2000円とする
ここまでくれば、特約の条文として適切なものになったと言えるでしょう。
あとは、原状回復義務以上の内容が借主負担となっていることを借主に伝えて了承してもらうことです。
また、襖の張替え費用が相場から著しく乖離していないか、ということも確認しましょう。そうすることで、問題なく特約として成立するでしょう。
まとめ
原状回復に関する特約について、特約として認められるための要件と、その要件を満たしていると判断するための基準を見てきました。
敷金から原状回復費用を差し引いたり、退去時に室内清掃費用を請求したりと、原状回復についての特約は多く見受けられます。
これを機に正しい特約を設けるよう心掛けましょう。
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