喫煙者が退去!クロス張替え代は請求できるか?
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入居者にとって、賃貸物件を清潔な状態に維持することは常識です。また退去時、入居者には原状回復義務があります。タバコが原因で内装張替えが必要な場合、貸主は入居者にクロス張り替え代をはじめ、費用をいくら請求できるかご存知ですか?
本記事では、減価償却と原状回復義務について解説し、貸主の権利を明確にします。また、特約の設置など貸主が費用を請求するための対策をご紹介します。
タバコのヤニによるクロスの汚れ、入居者に請求できるのか?
喫煙者に対して、タバコのヤニによるクロスの汚れを理由とした張替え代を請求できるのか?という悩みをよく耳にします。
賃貸住宅におけるトラブルで最も多い内容が「退去時の敷金精算」についてです。トラブルを避けるためにも、基本的なルールを押さえておきましょう。
原状回復義務とは?
入居者は、退去時に原状回復義務があります。
しかし、時間の経過で汚れや傷がつくのは仕方ないわけですし、なんでも請求されてはたまったものではありません。
そのため、原状回復のガイドラインやルールが設けられています。
東京都市整備局が発行している「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」では、原状回復について下記のように定義しています。
“原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等”
わかりやすくまとめると、下記になります。
・貸主の費用負担:普通に住んでいて付いたキズや汚れ(経年劣化)
・借主の費用負担:ワザとや不注意で付けたキズや汚れ(故意・過失)
では、喫煙によるクロス汚れは貸主・借主どちらの費用負担になるのでしょうか?
「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」では、喫煙によるクロス汚れやニオイについては通常損耗ではなく借主の費用負担とする場合が多いととらえられます。
時代の流れとともに喫煙者数が減少しており、賃貸物件ではタバコを喫煙しないという認識が一般化してきていることが理由かと思います。
経年劣化・減価償却とは?
では、タバコによる汚れについて、借主はどこまで負担しないといけないのでしょうか?
解約精算時に重要なポイントとなるのが、「経年劣化」と「減価償却」です。建物や設備は、年数が経てば自然に価値が下がっていくものと考えられており、入居の年数や設置からの経過年数によって価値が減った額で精算を行うべきという考えです。
継続して入居していれば、設備の価値が下がっていくので、喫煙によってクロスの張替が必要な場合も今の価値で考えての請求になります。なので、故意・過失があったとして、入居年月が長ければ入居者に請求できる金額はほとんどなくなってしまいます。
「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」では、クロスの耐用年数は6年と考えられているので、入居から6年経過している場合はクロスの価値はほぼ0円になるため、張替費用は請求できないとも考えられます。
しかし、クロス自体の価値がなくても、喫煙が原因でクロス張替を行わなければいけない場合は、張替にかかる作業代は入居者に請求できるケースもあります。
個別の事情や状況によって、請求できるかどうかや請求できる金額に差が出ますので、トラブルになりそうな場合は法律の専門家に相談するのがよいでしょう。
特約で制限はできないの?
そもそも賃貸借契約を行う際にたばこを吸うことを禁止するような特約を設けることはできるのでしょうか?トラブルを避けるためにも良い手段のように思えます。
結論から考えて、禁煙特約を設けることは問題ないでしょう。
特約は貸主と借主の間で自由に定めることができ、お互いに合意が取れているのであれば問題はありません。もちろん度を越える金額を請求したり、一般常識的に不可能な条件を付けたりすることはできません。
きちんと賃貸借契約時に説明して、入居者にその特約を認識・理解させることが大事です。
まとめ
原状回復のルールや考え方はガイドラインで定まっており、さまざまの条件や状況によって対応が変わっていくのできちんと理解して対応していくことが大事です。
タバコの汚れによる原状回復費用を入居者に負担させる場合には、通常のルールの他に特約を設けておくほうがよいかもしれません。喫煙者にとっては厳しいルールかもしれませんが、非喫煙者にとってはタバコの煙やニオイは不快なものです。
賃貸マンションやアパートではタバコを吸わないことが当たり前の世の中がすぐそこに来ているのかもしれません。
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